陰極での反応
電解槽中に存在する電極,電解質,水の中で最も還元されやすいものがe-を受け取る。
e-の受け取りやすさ:〔 Ag+,Cu2+,H+ > H2O > Na+など 〕
金属のイオンがe-を受け取る反応 〔 Cu2+ + 2e- → Cu 〕,〔 Ag+ + e- → Ag 〕
H+がe-を受け取る反応 〔 2H+ + 2e- → H2 〕
H2Oが電子を受け取る反応 〔 2H2O + 2e- → H2 + 2OH- 〕(H+の反応の左右に2OH-を加えたもの)
陽極での反応
電解槽中に存在する電極,電解質,水の中で最も酸化されやすいものがe-を放出する。
e-の放出しやすさ 〔 Cu,Ag > Cl-,OH- > H2O 〕(Cu,Agは電極として存在する)
Cu,Agの反応 〔 Cu → Cu2+ + 2e- 〕,〔 Ag → Ag + e- 〕
Cl-,OH-の反応 〔 2Cl- → Cl2 + 2e- 〕,〔 4OH- → O2 + 2H2O + 4e- 〕
H2Oの反応 〔 2H2O → O2 + 4H+ + 4e- 〕
(OH-の反応の両辺に4H+を加え,H2Oを右辺から消去したもの)
電極にPtやCを用いた場合や,水溶液中にNO3-,SO42-がある場合,これらの電極やイオンは電子を放出しにくいので反応しない(他に存在する物質が反応する)。
例題
次の水溶液や融解液を( )内の電極で電気分解したときの陰極と陽極の反応をe-を用いた反応式で書け。
(1) NaOH水溶液(電極Pt) (2) H2SO4水溶液(電極Pt) (3) NaCl水溶液(電極C) (4) CuSO4水溶液(電極Cu)
(5) NaCl融解液(電極C)
(1) Na+,OH-,H2O,Ptが存在
陰極:H2Oが反応 2H2O + 2e- → H2 + 2OH- 陽極:OH-が反応 4OH- → O2 + 2H2O + 4e-
(2) H+,SO42-,H2O,Ptが存在
陰極:H+が反応 2H+ + 2e- → H2 陽極:H2Oが反応 2H2O → O2 + 4H+ + 4e-
(3) Na+,Cl-,H2O,Cが存在
陰極:H2Oが反応 2H2O + 2e- → H2 + 2OH- 陽極:Cl-が反応 2Cl- → Cl2 + 2e-
(4) Cu2+,SO42-,H2O,Cuが存在
陰極:Cu2+が反応 Cu2+ + 2e- → Cu 陽極:Cuが反応 Cu → Cu2+ + 2e-
(5) Na+,Cl-,Cが存在
陰極:Na+が反応 Na+ + e- → Na 陽極:Cl-が反応 2Cl- → Cl2 + 2e-
【ファラデーの電気分解の法則】
電気量
電気的な+,-のことを電荷といい,その大きさを電気量または電荷量という。電気量の単位はクーロン(記号C)で示し,1Aの電流が1秒間に流れたときの電気の量を1Cとしている。i〔A〕の電流がt〔s〕流れたときの電気量Q〔C〕は〔 Q = it 〕で表される。
ファラデーの法則
電子1molあたりの電気量の絶対値は9.65×104〔C〕である。これをファラデー定数F〔C/mol〕という。ファラデー定数は電子1個あたりの電気量の絶対値(電気素量という)とアボガドロ定数NA〔/mol〕積である。
電気分解では陰極,陽極の反応を電子e-を含んだ化学反応式で示すことができる。つまり,反応式の係数の比から反応する物質や生成する物質の物質量を電子の物質量から求めることができる。これがファラデーの法則で,「電気分解で生成する物質の物質量は,電子の物質量に比例する」と示されている。
例題 次の各問いに答えよ。ファラデー定数F=9.65×104〔C/mol〕
(1) 2.0Aの電流を1時間流した。流れた電気量は何Cか。
(2) 2.0Aの電流で9650 Cの電気量を得た。電流を流した時間は何秒か。
(3) 2.0Aの電流を10分間通じたときに流れる電子e-は何molか。
(1) Q=it = 2.0×1×60×60=7.2×103C (2) Q=it より,t=Q/i=96500/2.0=4.8×103秒
(3) 電気量は,Q=it =2.0×10×60=1200〔C〕,e-は1molで9.65×104Cなので,1200/96500=1.24×10-2≒1.2×
10-2〔mol〕
例題 硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液を白金Pt電極を用いて,0.50Aの電流を1930秒間流 し電気分解した。下の (1),(2)をそれぞれ求めよ。Cu=64,ファラデー定数F=9.65×104〔C/mol〕
(1)陽極で発生する気体は何か。また,標準状態でその体積は何mLか。 (2)陰極で析出する金属は何か。また,何gか。
電気分解で起こる反応
陰極:Cu2+ + 2e- → Cu 陽極:2H2O → O2 + 4H+ + 4e-
電気量と流れた電子の物質量
Q=it =0.50×1930=965〔C〕,e-は1molで9.65×104Cなので,965/96500=1.0×10-2〔mol〕
(1) 陽極の反応より,e- 4molでO2
1mol(=22.4×103mL)発生するので,実際に流れたe-1.0×10-2molでは,
22.4×103×1.0×10-2/4=56〔mL〕
(2) 陰極の反応より,e- 2molでCu
1mol(=64g)生成するので,実際に流れたe-1.0×10-2molでは,
64×1.0×10-2/2=0.32〔g〕
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